World 世界観

リザードマン

人間、ドワーフ等と比べると、人口は十分の一にも満たない少数の種族。
爬虫類に類する姿から、“呪われた種族”として忌み嫌われてきた。現在も、独自のテリトリー内で、ひっそりと暮らしている。
差別を受けた長さ故か、感情表現に乏しい者が多く、容易に他人を信用しない。
人間に準ずる肉体と頭脳を有するが、一番の特徴は、高い治癒能力と心肺機能にある。

首都と領土

砂の都と呼ばれる“ロイド=ハン(希望の門の意)”を首都としている。中央部の城は“ロイド=デン城(希望の鍵の意)”と呼ばれる。周囲を砂漠に囲まれた都市で、大きな砂嵐が起こると、ロイド=ハンそのものが半分以上、埋没してしまう。すべて日常のため、住民はまったく気にしていない(流砂の道筋があり、自然とはけてゆくと知っているため)。しかし、砂嵐の脅威は他種族には耐えがたいものであり、それが脆弱な防壁しか持たないこの都市の武器とも言える。

ロイド=ハン

ロイド=ハン中央部の城"ロイド=デン"の地下は、砂漠のただ中とは思えないほどの大規模な地底湖“ダビオロの恵み”が眠る。
しかも、砂のろ過機能によって、その水質は世界でも類を見ないほど高い。
この一族の生命線となる“ダビオロの恵み”は国家機密に該当し、国の高官によって管理されている。
“ダビオロの恵み”から派生した小規模な地底湖もいくつか見つかっており、こちらは庶民の喉を潤すために使用される。
やはり、ろ過機能により、素晴らしい水質を誇る。
ほとんどの建築物は砂と土を練り合わせた粘土に近いもので作られており、強度を望むべくもない代物。
生活には支障はないが、戦闘時の防御力は期待できない。
反面、修復と増築は、コストとスピードの面で圧倒的であり、災害で建物が崩壊しても翌日には復旧している。

政治状況

  • ハルビドロ帝国

ハルビドロ帝国

首都:ロイド=ハン 統治者:バロア

現在は“ロイド=ハン”の支配下、“砂の女帝”と呼ばれる“バロア帝”の治世にあり、オークとの抗争、エニグマの侵攻を除けば、大よそ、安定している。
その無表情と、無口さから、何を考えているか分からない、と他種族の者に陰口を叩かれるバロア帝(もっともリザードマンという種族の特徴でもある)だが、これは熟慮に熟慮を重ねる性格によるもので、その実、かなり聡明な人物である。
これは、他の種族が、ゲッシーの存在を神話世界のものと括ってしまったことと、リザードマンという、彼らからすると特異な種族との交流に積極的でなかったこと、何よりリザードマンが自らの利益にならないことを無暗に口にしないという性質による。
「砂の都など役に立つまい」と罵った者に「さて、お役に立つため、如何様にも形が変わります故に……」と微笑んだとの記録も残る。
民の支持も固いものがあり、一説には半数以上の人々がバロア帝のために働きたいと答えているという。
冷めた性格と言われるリザードマンの性質を思えば、これは驚異的な数字と言える。
バロア帝も”ノーファスライルの環”に名を連ねている。

歴史

落涙の日と砂地の帝国

リザードマンの歴史は案外に長く、有史の範疇で、八十もの王朝を経て、現在の“ハルビドロ帝国”に至っている。
本来は内陸部に領土を持ち、そこに独自の帝国を築いていたが、五百年ほど前、他種族との大戦である“トマク山の大乱”に敗れ、現在の砂の領域に追いやられてしまった。
この日を“落涙の日”と呼んで、リザードマンたちは忌み嫌う。

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以後は、オークに征服されたり、ドワーフに臣従を誓わされたり、忍辱の歴史を刻んできたリザードマンだったが、二百年前の“ガイオロ帝国”の治世に、戦の天才と称えられた英雄・ヴァリヤ将軍が現れる。
精神面、装備面、ついには化学療法まで用いて、徹底した軍事改革をもたらしたヴァリヤ将軍は、全土においてオークの軍隊を撃破し、彼らの奴隷に近かったリザードマンの地位を引き上げることに成功した。
リザードマンの歴史と独立は、事実上、この時点から始まったとしても過言ではない。
以後も、オークとは激しい戦争をくり返しているが、他種族とは交易を成すまでにその関係を構築し、現在に至っている。

軍事面

特徴を活かした戦術

元来、リザードマンは戦闘に長けた種族ではなかったが、二百年前に“革命の師”と呼ばれた英雄・ヴァリヤ将軍によって、状況が一変する。
ヴァリヤ将軍は、種族の特徴である治癒能力の高い者を集め、投薬や食生活の改善をもって、限界まで引き上げることに成功する。
こうして生まれた兵士は、矢を射かけられても、魔法に打ち据えられても、容易に屈せず、他種族からは“不死兵”と呼ばれて恐れられ、何より気味悪がられた。
特に“ヴァリヤの不死隊”と呼ばれた精鋭軍は、オークの砦に真正面から挑み、無数の矢を浴びながらも進軍を緩めず、正門を破壊するという戦果をあげている(後に“不死の葬列”と呼ばれる)。
他にも橋の爆破など、潜水能力を活かした作戦も、他種族からすると脅威である。
また、あまり目立たないが、独自の魔法も持つ。
これは他種族に比べると、呪術の色合いが強く、直接攻撃よりも、徐々に蝕んでゆく系統の魔術である。

宗教と信仰

豊穣と恵みの神ダビオロ

豊穣と恵みの神である“ダビオロ”を崇める者が多い。
しかし、落涙の日以前、元来の支配地域の神であった、時の女神“トマク”を現在でも信仰する者たちが少なからずいる。
ダビオロ神は、水瓶を持ち、そこから流れ落ちる水流を人々に分け与えている姿で描かれることが多い。
砂漠の土地ならでは画姿と言えよう。
また、天空に向かって息を吹きかける姿でも描かれる。
これは砂嵐を呼び、外敵を撃ち倒す姿を表し、つまり、ダビオロは軍神の側面も与えられている。
トマク神は、時を刻んだ旋盤を盾のようにして持ち、掲げた姿で描かれる。思案顔で、地面の板に何かを書き込んでいることが多いが、これは人の寿命を計算する姿とされている。

法的なものに宗教観が組みこまれており、国の儀式を取り計らうときは、バロア帝よりも上位の席に神官が座ることになっている。
裁判所でも裁判官が宣誓をするのは、神官の手を取ってであり、古から続く神への信頼が垣間見える。
反面、冷静で理知的なリザードマンは盲目的な宗教観も持ってはいない。
ほとんどの儀式で最後に告げる「神よ、どうかあなたは御静観を」という言葉は、いたわりの様に見えて、神に一線を引いたリザードマンの宗教観がうかがえる。
国の公式文書に「神はいない」と明記したのは、リザードマンが最初であり、神官の社会的な地位も決して高いとは言えない。

文化と交通

芸術と医学

ガラスや銅板を使った芸術作品が得意であり、その系統の芸術家も多い。
また、水源は少ない反面、砂のろ過作用で水質は高く、絵の具の質が良い。
発色が別物として、世界中の芸術家がこぞって購入に来る。
特に“ロイドブルー”と呼ばれる独自の絵の具は、高額で取引されている。
その外見から他種族には誤解されがちだが、リザードマンはおしゃれに気を遣う、美的センスのある種族である。
毒や薬の研究も盛んで、独自の技術を持つエルフを除けば、リザードマンの薬は高級品となる。
ちなみに、リザードマンは毒に弱い種族で、自らが毒される危険性から、積極的に戦争では用いられない。