World 世界観

ヒューマン

イアル世界で最も多く見られる種族。
総じて勤勉で勇猛であり自己鍛錬の情熱にかけては他種族の追随を許さない。
基本的に仲間意識が強く、家族を大切にするが、生まれや環境によって性格的な個体差が大きい。

首都と領土

かつては、この世界の最大勢力としてあった種族。現在は人間同士の確執から、“ヴァルメル国グロスカッド王朝”“ギュリアム境国”“マクマミア国マクマミア朝”三つの勢力に分かれてしまっている。特に“グロスカッド王朝”の軍事政策により、その歪みは深いものになってしまった。三勢力とも一長一短はあるものの総じて拮抗した力を持ち、エニグマの侵攻という世界危機の最中にあっても変わらずにしのぎを削っている。それぞれが外敵を抑止しながらの紛争であり、逆に言えば個々の戦力がそれほどに強大との証でもある。

ヴァルメル

“グロスカッド王朝”の首都は、王都・ヴァルメル(正義の意)と呼ばれる石壁で囲まれた城塞都市。中心にそびえる城もヴァルメルと名づけられている。三国の中では一番の強国となり、“ギュリアム境団”“マクマミア朝”とも、元をただせば“グロスカッド王朝”の臣下である。特産品は小麦と綿花、乳製品、紙製品と革製品が中心。他の種族には見られない安価な書籍群も、ある意味ヴァルメルの名産品と言える。反面、内陸に存在するため、鮮度を必要とする魚類や野菜は不足しがちである。

ギュリアム

“ギュリアム境国”の首都は、ギュロア(清廉の意)と呼ばれ、人間の領土では北の辺境を支配する。本城は白亜の城壁を持つギュロアの宮殿。宮殿と名づけられてはいるが、長い戦乱の間に改築を繰り返し、実質、城塞の機能を備えている。その領土は深い雪に覆われるが、多くの養分を含んだ農耕地を持ち、イモやカボチャなど良質の作物が取れる。反面、遊牧などは盛んではなく、乳製品や綿花は慢性的に不足気味である。

マクマミア

南方に位置する“マクマミア朝”の首都は、水の都とも呼ばれるルーヴェン(血盟の意)。本城のルーヴェン城は、幾重にも水堀が取り囲む、水の都に相応しいもので、高い防衛力を誇る。ただし、軍事力も含め、国勢としては、三国の中では、一番規模が小さい。広大な水域ゆえに、漁業や、魚油の精製が盛んに行われており、海水による製塩も大きな産業のひとつとなる。反面、土地そのものは痩せているため、農業はあまり活発ではない。

紛争中の三カ国ではあるが、民間の交流は途切れていない。巨大馬車の交通網にも支えられ、市場は盛況であり経済も活発。「剣の野心も、金の欲望は抑えきれぬ」とは、ある経済学者の弁である。その支配地域は広大かつ温暖で、国によって格差はあるものの、比較的平穏な地方が多い。 ただし、オークやドワーフとの戦争の最前線地域は長い戦乱によって荒れ果て、延々と荒野が広がっている。

政治状況

  • グロスカッド王朝

  • ギュリアム王朝

  • マクマミア王朝

グロスカッド王朝

首都:ヴァルメル 統治者:ウォルリック

グロスカッド王朝は、三代目のウォルリック王の治世となる。
自国民からも“狂王”と呼ばれたウォルリックは、オークからの攻撃を機にして軍事政策に乗り出す。
新たに宰相の座についたヴァーミッドと共に、オーク、ドワーフの領域へと執拗な侵略戦争をくり返した。
それなりに戦果を生み出したウォルリックの外征ではあったが、凄まじい重税と圧政を招き、ギュリアム境国の独立、マクマミア朝設立の直接の引き金となっている。
だが、王族であるエミリー王女が、王家代々の精鋭軍“黒角騎士団(こっかくきしだん)”の支持も得て統治へと乗り出し、政情は一応の安定を取り戻している。エミリー王女は秘密同盟“ノーファスライルの環”にも新たに加わることになった。

ギュリアム王朝

首都:ギュリアム 統治者:アッザリア

ギュリアム境国を治めるのは、アッザリア・ギュリアム夫人という女性である。
ウォルリック王の父、グルカン2世(グルカン・ティリオ・グロスカッド)の愛人として、グロスカッド王朝に取り入った彼女は、生来の野心と聡明さをもってその人脈を広げ、ついには政略結婚をもって、郷土でもあるギュリアム地方という直轄地を得る事にも成功した。
しかしグルカン2世の死後、グロスカッドを離れギュリアムを統治を始めた彼女は、ウォルリック王の重税に苦しむ事となる。
最終的にギュリアム地方の統治権を返還するように求められ、ついに彼女は独立の道を決断する。
その後グロスカッドに宣戦布告、独立戦争を繰り返して現在に至っている。
アッザリアの宣戦布告は、国力を比較すれば危険な賭けであったが、正当な行為と多くの家臣が支持をした。
これは、歴史を鑑みればグロスカッドよりもギュリアム公家の方がより正統な王位に近いというプライドによるものである。

マクマミア王朝

首都:ルーヴェン 統治者:ランヴォルド

第三の国となるマクマミア朝を統治するのは、ランヴォルド・マクマミアスという男である。
彼はグロスカッド王朝の傘下にあり、マクマミア地方を治める領主に過ぎなかったが、アッザリアによるギュリアム境国独立を聞き及ぶや、後を追うように独立を宣言。
同時にマクマミア朝を設立した。
グロスカッドとギュリアムが独立戦争の干戈を交えている最中であり、まるで火事場泥棒のようなその行動は、後々まで姑息との嘲笑を浴びる事となった。

こうして人間の領土は三分化され、現在も紛争を続けている。
もっとも、それらの混乱は国の中枢部のみで、広大な領土もあって、地方では昔ながらの平穏な生活が続いている。

歴史

同盟と戦争を繰り返す王朝

有史に残る範囲では、七代の王朝を経て、現在に至る。
いずれの王朝も、エルフ、ドワーフといった多種族と、大なり小なり協力関係を持ったり戦争に陥っている。
その中でも、約5百年前に栄えた“メヴィバラス朝(五本指の意)”は、英雄・ノーファスライルを初代国王に迎え、エルフ、ドワーフとも固い同盟を結んだ大国だった。

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現・グロスカッド王朝は、約百年前に初代グルカン王がおこしたクーデターによって樹立したものであり、口の悪い国民からは“王殺し王朝”などと呼ばれている。
グルカン王はクーデターに際し、オークやドワーフに軍事協力を求めた。
しかしその勝利の後、約束の報酬を反故にするという暴挙に出る。
結果、激怒した両種族と戦争状態に陥り、現在まで続く禍根となってしまった。

幼少でグロスカッド朝の三代目を継いだウォルリック王は、対外的な強硬政策で知られ、数多くの侵略戦争を行った。
この十年の主なものだけでも約九年前の“フォルアリア領侵攻”、人間とエルフ・ドワーフ連合軍との大戦となった七年前の“第一次精仁戦争”、四年前の“第二次精仁戦争”およびオークとの大戦“ヂザルボ争乱”がある。

軍事面

黒白赤の精鋭軍

現在の三カ国に分裂する前は、“黒角騎士団(こっかくきしだん)”“白爪騎士団(はくそうきしだん)”“赤牙騎士団(せっがきしだん)”という三つの精鋭軍で知られていた。
通称に「黒白赤(こはくせき)」があり、それぞれを「黒騎士」「白騎士」「赤騎士」とも呼ぶ。いずれも規律正しく、強力な戦闘力を持っており、戦士と魔術師のバランスもよいものであった。

三カ国に分離した現在は、グロスカッドに黒角騎士団、ギュリアムに白爪騎士団、マクマミアに赤牙騎士団と、皮肉なことにそれぞれの国の精鋭軍として機能している。
マクマミアの玉座にあるランヴォルド王は、グロスカッドに臣従していた頃より赤牙騎士団の団長であり、現在でも変わらず猪上にある。

宗教と信仰

慈愛のダルキソス

住民の九割方は“慈愛のダルキソス”という神を崇拝している。
ダルキソス神の特徴は、片目、片腕であること。
これはあまねくすべての生命に、自らの半分を分け与えよとの教えによる。太古の文献では、片足も失われていたり、自ら断ち切っていたり、枷をはめていたりする姿で表現される。
もっとも、近年は「残された“半分”は名誉をかけて守れ」との教義の拡大解釈もなされており、軍神の象徴として担ぎ出されることも多い。

手には、枯れた細い木の枝(“想いの指”と呼ばれる)を握っているが、それが武器なのか、弱き者をいたわれとの教えなのか、研究者の意見も様々に分かれている。

多様な宗教観

極端に敬虔であったり、背教的であったり、様々な人間がいる。
さらに、日によっても信心深さが違うなどバラつきが生まれる種族として、エルフやドワーフなどから軽蔑される。
ただし、成人の誓い、騎士の宣誓などは、必ずダルキソス神の象に対し、その経典を手に行うため、潜在的な信徒はもっとも多いとも言える。

文化と交通

享楽のための芸術

壮麗さも好むが、実用面も重要視する。
特に建築物は、その目的によって、バラックから石造りの宮殿まで様々なものを作り上げる技術と特質を持つ。
絵画、音楽なども好み、熟練の芸術家たちも数多く存在する。
ただし宗教色は薄く、あくまで享楽のために創作活動が成されている。
吟遊詩人は人間に一番多く(面白おかしく語る気質が他の種族には欠けている)、乞われてエルフやドワーフの都市まで遠征したりもしている。
いわゆる旅芸人状態。

馬車で繋がる主要都市

主要都市はすべて巨大な馬車で繋がれており、その移動に不便はない。運行も正確無比。馬車馬に使われるのは、聖獣ユニコーンとの交配種と伝わるナノコーンであり、その強靭さは比類なく、不眠不休で人間の領土を駆け巡っている。ちなみにナノコーンは肉食である。